研究紹介


ハイダイナミックレンジ画像の詳細強調例

研究概要
明暗が激しいなど,撮影環境として過酷なシーンから情報を取り出し,監視や車載カメラ,医用画像,天文画像,ひび検知など様々な分野に対して応用する技術に関して研究を行なっています.

人間の目ではしっかり見えているのに,カメラを通すと黒く潰れてしまったり,反対に白く飛んでしまったりして撮影できない場合があります.これは撮影シーンの持つダイナミックレンジが,カメラの撮影できる範囲を超えてしまっているためです.
従来のディジタル画像では明暗が激しく広いダイナミックレンジを持ったシーンの輝度情報を保持できないため,ハイダイナミックレンジ画像と呼ばれる高品質画像を用いた画像処理技術が必要となります.現在,私たちは 30bpp 以上の高いビット深度を持ち,広いダイナミックレンジの輝度情報を保持できるこのハイダイナミックレンジ画像に関して特に研究を行なっています.


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テーマ「詳細保存性能を有する高ダイナミックレンジ画像のトーンマッピングと圧縮符号化に関する研究
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テーマ1:多重露光画像の統合
概要
現行のカメラを用いてハイダイナミックレンジ画像を取得するためには,多重露光画像と呼ばれる異なる露光で撮影された複数枚の画像セットを統合するのが一般的です.しかし,複数枚の画像を撮る間にシーン内に動きが生じたり,カメラが手ぶれなどでずれてしまった場合にブレやゴーストが発生してしまうなど,多くの問題が存在します.そのため,これまでは高精細なハイダイナミックレンジ画像の取得には撮影環境や撮影対象に関するいくつかの制限や,ハイエンドなデジタルカメラや高価な撮影機材の使用が必要となっていました.本研究では誰もが簡単にハイダイナミックレンジ画像を取得できる技術の確立を目指しています.
主な業績
・Takao JINNO, and Masahiro OKUDA, “Multiple exposure fusion for high dynamic range image acquisition,” IEEE The Transactions on Image Processing, Vol.21, No.1, pp.358-365, Jan. 2012.
キーワード: ハイダイナミックレンジ画像,多重露光画像の統合,動き補正,ノイズ除去

テーマ2:ダイナミックレンジ圧縮 (トーンマッピング)
概要
ハイダイナミックレンジ画像は現在普及しているディスプレイデバイスが表現できる範囲を超える広いダイナミックレンジを持っており,直接表示することができません.そのため,表示できる範囲にまでダイナミックレンジを圧縮する必要があります.つまり,ハイダイナミックレンジ画像が持つ多くの情報をアプリケーションに合わせてトーンマッピングし,表示しなければいけません.本研究では特に車載カメラや監視システムにおいて重要となるシーン内の詳細情報に対する視認性の確保を目的としたトーンマッピング技術の開拓を行なっています.ハイダイナミックレンジ画像技術を用いた車載カメラシステムが実現されれば,ヘッドライト越しに相手のナンバーを読み取ったり,夜の暗い車内にいる人物の特定ができるようになったり,これまでの車載カメラでは解決が難しかった問題のブレイクスルーにつながります.
主な業績
・Takao JINNO, Kazuya MOURI, and Masahiro OKUDA, “High Contrast HDR Video Tone Mapping Based on Gamma Curves,” IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Vol.E94-A, No.2, pp.525-532, Feb. 2011.
・神納貴生, 奥田正浩, “HDR監視カメラのための移動物体を考慮したトーンマッピング,” 電子情報通信学会論文誌A, Vol.J94-A, No.6, pp.426-429, Jun. 2011.
・Takao JINNO, Kazuya MOURI, and Masahiro OKUDA, “HDR Video Tone Mapping based on Gamma Blending,” IEEE ICIP2010, pp. 2521-2524, Sep, 2010.
キーワード: ハイダイナミックレンジ画像,トーンマッピング

テーマ3:ハイダイナミックレンジ画像の圧縮符号化
概要
ハイダイナミックレンジ画像は高ビット深度であるため,非常にファイルサイズが大きく,伝送を考えた場合に効率よく圧縮符号化する必要があります.本研究では一般的に普及しているディスプレイで表示可能なトーンマッピング画像を用いた多層符号化技術について研究を行なっており,特に復号側のユーザがトーンマッピング効果を選択することのできる効率の良い多層符号化について研究を行なっています.
主な業績
・Takao JINNO, Masahiro OKUDA, and Nicola ADAMI, “New Local Tone Mapping and Two-Layer Coding For HDR Images,” IEEE International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing (ICASSP), Paper Code:IVMSP-L1.1, Mar. 2012.
・Takao JINNO, Masahiro OKUDA, and Nicola ADAMI, “Detail Preserving Multiple Bit-Depth Image Representation and Coding,” IEEE International Conference on Image Processing (ICIP), pp.1533-1536, Sep. 2011.
・神納貴生, 奥田正浩, “二種類のトーンマッピングを用いた三層HDR符号化,” IEICE 技術研究報告, Vol.111, No.102, pp.73-77, Jun. 2011.
キーワード: ハイダイナミックレンジ画像,圧縮符号化,トーンマッピング,多層符号化